2008年2月24日日曜日

永田農法についての考察

ロマネスコの成長は週一回くらいで更新していきます。

去年はベランダでトマトを育てていました。
永田農法で。

永田農法とは...
・水はけの良い、あまり栄養のない土で育てる。
・水遣りを極力控える。しおれてきたら、リン・窒素・カリウムを含む液体肥料を少量与える。

というのが基本。ほかにもいろいろあるけど、割愛。
要するに、水を遣らない。
そうすると、甘くて、比重の高い(水に沈む)栄養たっぷりの野菜ができるという農法です。


で、こんな感じのトマトができました。





















とても美味しい。しかし、小さい。
下の写真は

       市販のトマト
永田農法のトマト    永田農法のトマト
     永田農法のプチトマト
の順。
























ちょっと永田農法について考察。


植物は動けないので、時々刻々と変わる外部の環境に応答して生きていかねばなりません。
永田農法は貧栄養・乾燥ストレス下で育てる農法ということになります。乾燥ストレス下では低温ストレスにさらされたときと似た応答が起きることが知られていて、その一つがガラクチノールやラフィノースといったオリゴ糖の蓄積なのです。ラフィノースはスクロースの20%程度の甘さですが、まあ、甘いもんです。細胞内にオリゴ糖を貯めるとどうなるかというと、低温下では耐凍性が高まるし、乾燥化では浸透圧の維持とDNAやタンパク質が保護されます。


で、ここからが本題なのですが。
永田農法を始めた永田照喜治氏は、

トマトなどは原産地の気候に近い条件(=水を少なめにする)で育てることにより植物が気持ちよく育つことができる

と言っているのです。根もしっかり張るし。
あと、
細胞の大きさが揃っているので火の通りが良い

とも。

実際は極度の乾燥ストレス下で育っているので乾燥に対する応答として糖を蓄積しただけであり、貧栄養条件で育てているために細胞壁が肥厚せず、火の通りが良いだけなのです。枝がものすごく折れやすいのですよ。
あとね、リンは与えているけど水はけが良いのでリン酸欠乏になってりまうのですが、リン酸欠乏だと主根の伸張抑制と側根・根毛の誘導が起きるのです。

別に植物が気持ちよく育っているから美味しくなるわけでも、根をしっかり張るわけでもないのです。

ああ、あと、植物でさえそうなのだから人間も多少ストレスがある環境のほうが実のある人間になるのだ、とかいう精神論に敷衍しないでくださいね>校長先生とか。

別に永田農法がいかんと言っているのではないのです。僕は永田農法で育てると美味しいと思うから今後も続けますけどね。
一つ言うとすれば、「植物が気持ち良く育つ」という擬人化をやめませんか。行き過ぎると、オカルトになっちゃう。植物に心があるとか、水は何でも知っているとか、自然は常に良いものだ、みたいな。

永田農法は貧栄養・乾燥ストレス下で植物を育てることで細胞内にオリゴ糖を蓄積させて甘味を増やすことのできる農法です。それ以上でも以下でもありません。
過酷な環境に応答して発育は悪いですが、植物に脳や心はないので同情する必要はありません。外部の環境に対応できているのだから、乾燥ストレスは生存のためには織り込み済みの環境なのです。細胞壁が薄くなるから病気には弱くなりますがね。だからと言って農薬まくのもねえ。

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